大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1358号 判決

被告人 田中武史

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第二点について。

原判決は被告人の実兄田中芳男が刑法第二五一条により準用される同法第二四四条第一項後段の親族であるとして被告人の判示第二、の恐喝未遂の罪を処断したものであることを知るに難くないこと前記のとおりである。そして刑法第二五一条により準用される同法第二四四条第一項にいわゆる同居の親族とは、事実上居を同じうして日常生活を営む親族をいうものであつて、原判決引用の証拠によれば、被告人は昭和三二年二月一八日松本少年刑務所を出所し本籍地の実兄田中芳男方に居住していたが、同月二八日頃家出し約一週間後帰宅して同人に対し東京へ行つて働くから金一万円貰いたいと云つたので、同人は被告人に金一万円を渡すと被告人はこれを持つて上京し、同年三月十日頃から東京都荒川区三河島八丁目一六四八番地緑荘内須田清二方に住込みで雇われ露店商に従事しているうち、同年四月一〇日頃同人の妻悦子から郵便貯金一万円の払戻方を依頼され、これを払戻して保管中着服横領し須田清二方を無断出奔し、その後一定の住居をもたなかつたことを認めることができるのであるから、被告人と実兄田中芳男との間には原判示第二、の犯行の日である同年四月一二日及び一三日当時刑法第二四四条第一項にいわゆる同居の親族という関係はなかつたものといわねばならない。被告人が所論のように右須田清二方に居住していた当時実父田中甚蔵、及び実兄田中芳男に宛て送金方依頼の手紙を発し、これによつて実兄田中芳男が同年三月二七、八日頃下着類と現金二〇〇〇円を被告人に送付したことがあるとしても、これをもつて被告人が田中芳男と世帯を同じくするもので同人との間に刑法第二四四条第一項にいわゆる同居の親族の関係があるものということはできない。しからば原判決が被告人と実兄田中芳男との間には同居の親族という関係がないものとして被告人の判示第二、の恐喝未遂の罪につき刑法第二五〇条第二四九条第一項を適用したのは相当であり、原判決には所論のような法令適用の誤はないから論旨は理由がない。

(加納 吉田作 山岸)

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